レオンは血走った双眸を大きく見開いた。
「う…そだ…」
 掠れた声が空気を揺らした。
 急激に絶望感が襲ってくる。どうしようもなく動揺すると、レオンを見下ろしていたルイナードの瞳

左右に揺れた。
 しかし、ふっと短く吐息すると、躊躇ない様子でレオンの両脚を大きく割り開いた。
 ルイナードの言葉の衝撃で力をなくしかけていたレオンの性器が、彼の口内に含まれる。
「ひ…っあっ…」
 レオンの腰が、びくっと跳ね上がった。
 自然に暴れてしまう腰を押さえつけられ、先端を口撫される。髪と同じブラウンの草叢を指で梳きな
ら、茎の部分は絡めた指で扱かれる。
 そうされていると、萎えかけていた性器にたちまち血液が集まった。
 ルイナードの愛撫で、再び自身が固く張り詰めていくのが分かる。
 レオンは必死に唇を引き結んだ。
 ルイナードが仕掛ける罠にことごとく嵌り、あげく感じてしまっている。ルイナードより、そんな自分

ほうが赦せない。
 何とか意識を別のところへやり、快楽をやり過ごそうとした。
 だが、執拗な口撫にそれも適わない。
 痛みに耐えることができても、快楽をよそへやってしまうことはできない。
 括れに舌を這わされ、先端の割れめを突かれると、身体が意思に逆らって反応を示してしまう。
 腰の奥にどうしようもない甘い疼きがわいてきて、それがどんどん蓄積されていく。
「ん……くっ…」
 熱いものが管を上がってくる感覚に、レオンは焦った。
 必死の思いで身体を捻る。
 しかし力ない低抗は無駄だった。あっさりとルイナードに抑え込まれてしまう。
 ぴちゃぴちゃと、わざと音をたてて舐められ、レオンの思考が羞恥心でかき混ぜられた。
 どんなに頭を振っても、ルイナードがレオンを官能へと引き摺り込んでいく。
 深く咥え込まれ、先端を喉奥で締められると、頭の芯がくらくらとした。
「んっ…あぁ…も……やめ…っ」
 結んでいた唇が解けて、無意識に甘い声が出てしまう。
 ふっ、とルイナードが鼻で笑った。
 それがレオンの耳に届いて頭に血が上る。
 だが、もう堪えようがなかった。限界だった。
 怒りに勝る快感がレオンに屈辱を与える。
 下腹に力が入って、腹筋がびくびくと痙攣した。
「くそ……野郎…っ……んっ……んんっ――!」
 せめてもの悪態をついて、レオンは熱を放出した。
 昇りきった高みから一気に堕ちていくような感覚。
 頭の中が真っ白になった。
 意識を失いかけて、ふっと現実に戻される。
 見開いた視界に映ったのは、激しく上下する自身の胸と、ルイナードの顔だった。
「くっ…」
 目が合うと、咄嗟にレオンは目を横に逸らした。
 みっともない。悔しい。
 それだけが頭の中をぐるぐるとしている。
 荒い呼吸のまま、眉根をきつく寄せて目を閉じた。
「その顔…いいな。ますます煽られる」
 そんなふうに言われても、レオンは目を開けなかった。ぎり、と奥歯を噛み締める。
 ルイナードが動いてベッドが軋む。
 ジッ…という聞き慣れた音に、レオンはびくりと肩を揺らした。
 薄く目を開け、そろと見遣る。
 レオンの身体に跨ったルイナードが、ジーンズのフロントを寛げていた。
「…っ」
 レオンの視線が固まる。
 にやりと、唇の端を上げたルイナードが、レオンの顔を見つめながら自身の性器を取り出した。
 レオンのものよりも大きな牡が晒される。
 それはすでに張り詰め、立ち上がっていた。
 背けようとした顔を、今度は顎を掴まれて阻止される。ルイナードがレオンの上半身を抱き起こした。
「子供じゃないんだから、どうすればいいのか…分かるよな?」
 半ば脅迫めいた口調で言って、性器を口もとに近づけてくる。
「く…っ」
 レオンは顔を振った。だが、後頭部を押さえられ、唇に先端を擦りつけられた。
 粘着質の液体が唇を濡らす。
 生々しい牡の匂いが鼻をつき、歯を食いしばった。
 すると、きゅっと鼻を摘み上げられた。
「んっ……っぅ」
 レオンは上目でルイナードを睨んだ。
「苦しいだろ? 水責めは得意か? まさか死ぬまで強情を張る気じゃないだろうな」
 抑揚のない声音で問うて、ルイナードが一層強く性器の先を押しつけてくる。
「…う…」
 レオンは顔を真っ赤にさせて耐えていた。しかし、こんなことで死ねるほどバカな人生を送る気はな
い。
「…っ…は……っん…っぐ!」
 口を開けて息を吸い込んだ拍子に、滾る牡を突っ込まれた。
 一気に奥まで犯され、喉を突かれて息が止まる。
「んっ…んんっ…んーっ…ぅう…」
 逃れようとしても、頭を押さえられていてできない。押し退けたくとも、両腕はだらりと下がったま
まで力
が入らない。
「噛み千切るなよ」
 ルイナードが、くっくっと喉を鳴らした。
 でき得ることなら望みを叶えてやりたい。そう思ったが、根もとまで深く咥え込まされていては、そ
れも
無理だ。
 苦しくて、生理的な涙が滲んでくる。
 唇の隙間から息をしようとして舌を使ってしまい、卑猥な音が鳴った。
 かあっと顔面が熱くなる。
 ルイナードが腰を前後に揺らし始めた。
 どくどくと脈打つ牡が舌の上を滑り、そのたびに羞恥心を煽る音が響く。
 本当なら耳を塞いでしまいたい。それさえ適わず、レオンはきつく目を閉じた。
 レオンの口内を蹂躪しながら、更に牡が膨張していく。
 喉を突く亀頭が大きく張っているのが分かる。
 ルイナードが腰を引くたびに、レオンの唇から涎が垂れ落ちた。
 もう無理、そう思ったとき、熱い牡がレオンの口内からゆっくりと退いていった。
「ん…くっは…っ……あぅっ!」
 口から抜かれる瞬間、前髪を掴み上げられて上を向かされた。
 血管が浮いて反り返った性器が、すぐ目の前にあった。
「…っは、はぁっは…ぁ…っ」
 レオンは大きく口を開いて呼吸をしながら、ルイナードを睨めつけた。
 ルイナードは笑っているのか、泣いているのか、よく分からない表情をしていた。
 これから何が起ころうとしているのか。
 簡単だ。答えはひとつしかない。
 性体験がないわけじゃない。が、自身と同じ性の人間に組み敷かれるような経験などない。
 恥辱と恐怖に襲われ、レオンは逃れようと必死の思いで身体を捻った。
 虚しく横向きに倒れてしまう。
「無駄だ。分かってるだろ?」
 分かっている。けれど大人しくなどできない。
 プライドは失っていない。
 ルイナードがもがくレオンの腕を取り、仰向けに転がした。片脚を持ち上げられ、肩に担ぎ上げられ
る。
 吐精を終えたレオンの性器が、力なく腹の上に寝そべる。ルイナードは、その性器の先から零れた残
滓を指で掬った。
 その濡れた指先を、レオンの脚の付け根の奥へと滑り込ませる。
 はっと息を呑むと、ぐり、と後孔に指を突きつけられた。
「あっ…い……っ…やめ…」
 自らが放った欲望を、ルイナードの欲望のために塗りつけられる。
 信じ難い現実に眩暈がした。
「ん……っはうっ!」
 おもむろに指を一本挿入され、レオンは苦しげに喉を仰け反らせた。
「あぁぁ…あ…やめ…ろぉっ…」
 根もとまで埋め込まれた指が襞を引っ掻く。出し入れされると、ぞくぞくとした感覚が起こってきて
、勝
手に声が上がった。
 レオンは刺激に身をくねらせた。
 胸の尖りは痛そうなくらいに充血して、ぴんと立ち、萎えた性器が再び息を吹き返し始めていた。
「くっ……そ…」
 後ろを弄られて感じている自分が信じられなかった。信じたくなくて、懸命に奥歯を噛み締める。
 それでも指を増やされ、優しく拡張されると、声が上擦ってしまう。
 ルイナードはレオンを傷つけないように、とろとろに蕩けさせていく。
 拷問のような責めに力なくシーツを蹴ることだけが、今のレオンにできる唯一の抗いだ。
 節張った長い指で嬲りながら、ルイナードが片手をベッドのサイドテーブルへと伸ばした。引き出し
を開
けて、小さなビニールの袋を取り出した。
 ルイナードはそれを指先で摘んで、レオンの目の前で揺らした。
「……っ!」
 それが何か、レオンにはすぐにわかった。
 レオンが赤面すると、ルイナードは楽しそうに唇を歪めた。
 見せつけるように口に咥えると、ビッ、と音を立てて、犬歯で避妊具の袋を破った。

desparate sex05に続く

2005,08【初】
2010,08【改稿】 ※04は新たに挿入。書き下ろし。

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